なぜ、若者はソーシャルメディアで「愚かな」投稿をするのか?最も危険なのは14~17歳?!

2015年2月12日

なぜ、あんな愚かな投稿をするのだろうか?
なぜ、マズイと思わないのだろうか?

未成年の飲酒を投稿したり、人の悪口を投稿したり・・学生アスリートの無謀ともいえるソーシャルメディア利用に頭を悩ませた指導者の方も多いはずです。この時期、新チームや新キャプテンを対象にしたソーシャルメディアセミナーのご依頼が増えます。この場合、積極的な情報発信ではなく、リスクマネジメントの一環として導入を希望されているので、どうしてもネガティブな内容になってしまいます。正論を押し付けるだけの、‘お小言’セミナーにはしたくないなと思い、なぜリスクの高い投稿をするのか、若者のソーシャルメディア利用を脳から理解してみようと調べてみました。

無題

『NATIONAL GEOGRAPHIC(ナショナルジオグラフィック日本版)』(2011年10月号)
解明されるティーンズの脳

結論から言うと、

リスクは認識できるが、友達からの評価を得るために危険を顧みない行動をとってしまう。

ということのようです。

発達心理学者ローレンス・スタインバーグ氏によると、危険な行動に最も走りやすいのは14~17歳。高校生と大学1年生くらいまでは含めて考えておいたほうがいいでしょう。ただ、10代の脳も充分リスクは認識できるのだそうです。リスクを認識しているけれど

リスク≪報酬

「報酬」が得られるならリスクも顧みないのだそうです。学校部活動のソーシャルメディアの最大のリスクは未成年の飲酒が拡散されることですが、未成年の飲酒はそもそもリアルの世界で守るべきルールです。未成年の飲酒は法律で禁止されているのは知っている、ただ、大人のように酔っぱらって騒ぎたい(=報酬)という欲求が、リスク意識を上回るということです。さらに興味深い実験結果がありました。

友達に見られていると、人が変わったように大胆になる

つまり、友達の評価こそが「報酬」なのです。1人でいるときはお酒を飲まない。だけど、友達が見ているとお酒を飲んでしまう。未成年なのに、お酒を飲んだ自分を友達に評価してほしいのです。そう考えると、より多くの人に評価してほしいとソーシャルメディアに投稿する心理も見えてきます。また、脳画像の研究から

人間の脳は健康や食料供給が脅かされることと同じくらい、仲間外れにされる状況に強く反応する

つまり、若者にとって、仲間外れは生命の危機に匹敵するということです。部活のみんなでお酒を飲もうという話になり、自分は未成年だから飲むべきではないと思っていても仲間外れになりたくなくて同調してしまうのかもしれません。お酒を飲まないという正しい判断ができる人を仲間外れにするようなチームではないという空気を上級生が作っていく必要があります。

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愚かな投稿≪友達の評価

この記事はもともとソーシャルメディアのリスクについて書かれたものではなく、自動車のスピードなど命を失うリスクを想定して実験されています。若者の脳は、自分の命を失うリスクよりも、友達の評価を優先してしまうのです。しかし、だからといって危険を顧みない‘愚かな’投稿も仕方ないとは言っていられません。1人の投稿で、部活動の活動停止につながることもあります。何より、1度の過ちが一生残ってしまうのがソーシャルメディアです。

それらを回避する特効薬があればいいのですが、今のところありません。ただ、若者もそれを見守る大人も「リスクより友達の評価を優先する」という脳の事情を理解しているのとしていないのでは大きく違います。また、10代の脳もリスクは認識できるのですから、何がリスクになり得るのかを、社会経験豊富な大人が教えていく必要があります。そして、月並みではありますが、「リスクを理解していても、リスクを冒すのが若者だ」「友達の評価が欲しいという気持ちに負けてしまうのが若者だ」と念じながら、我慢強く助言し続けることしかないのだと思います。そして、若者自身が自分の脳の特性を理解し、できる限りコントロールできるよう情報を提供するのが私の役割なのだと思います。

ちなみに、若者がリスクを冒すのにも意味があり、子孫を残し、充実した人生を送るために役立つという考えがあるのだそうです。

日本スポーツメディアトレーナー協会 糸川雅子

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